成長期の子犬の成長スピードは一定ではなく、サイズ別に異なるって知ってましたか?
小型犬は10ヵ月で約20倍、中型犬は12ヵ月で約50倍、大型犬は15~18ヵ月で約70倍の体重に成長します。
小型犬の成長期を18歳で成長が止まる人間に例えると、大型犬は27歳まで成長を続けることになります。成長率も20倍と70倍と大きな差!
こんなに違う小型犬と大型犬の成長。
となると「子犬用」だからといって同じフードをあげるのは、確かにちょっと心配ですよね。もうすこし詳しく見ていきましょう。
成長速度と成長率が全然違う小型犬と大型犬。
サイズ別にどんな配慮が必要か、さっそく見ていきましょう。
先に述べたようにサイズが小さいほど成長期が短く、早く成犬となります。そのため小型犬ほど子犬期のエネルギー要求量は高くなります。
一方、授乳期に骨の成長のピークが来る小型犬と違い、大型犬や超大型犬は離乳後に骨の成長のピークを迎えます。そのため骨を作るカルシウムとリンがバランスよく配合されたフードが必要になります。
ただ、腸粘膜細胞間の隙間が大きい子犬期はカルシウムを与えられすぎると過剰なカルシウムを吸収してしまい骨が変形してしまうことがあるため注意が必要です。これは成長期の長い大型犬ほど起こりやすいと言われています。また、大型犬は小型犬に比べ消化器官がデリケートな傾向にあり特に配慮が必要です。
このようにサイズ別の必要栄養・成長特性という観点から、かなりの違いがあることがわかります。
やはり「子犬用」とひとくくりで小型犬も大型犬も同じフードを食べさせることが本当にこの子の成長のためになるのか、一度よく考えた方がよさそうですね。この時期にサイズ別の必要な栄養を正しく摂取できていないと丈夫で健康な身体は作られません。
実はサイズ別以外にも、成長過程を前期と後期2つに分けた成長ステージについても配慮が必要なのは知っていますか?
例えば、乳歯が生えつつある2歳児と、部活動でくたくたになるまで動き回っている中学生。この二人が同じものを食べていたら、ちょっと違和感がありませんか?実は子犬期でも同じことが言えるんです。
一気に成長をする成長前期(2ヵ月齢まで)の子犬はでんぷんを消化する能力が成犬の40%以下。1回のごはんも沢山は食べられません。
ゆっくり成長をする成長後期(2ヵ月齢~)の子犬は、乳糖を消化する能力は低下しますが代わりにでんぷん消化能力が上がり、1回のごはんの量も増えます。そして、筋肉発達のピークを迎えるためタンパク質多めのフードが良いのです。
沢山食べられるようになる成長後期は前期よりもカロリー控えめなフードであることが重要です。既存の脂肪細胞のサイズが大きくなる成犬と比べ、子犬は脂肪細胞の数自体が増殖します。そのため脂肪細胞が増殖する成長後期に太らせてしまうと、成犬になっても太りやすくやせにくい体質になってしまうんです。
未来の愛犬の肥満の悩みの種がこんなところにあるのは気付かないですよね。このように成長ステージによって必要な栄養が変わってくるのはよく考えたら当然のことですね。
さて、サイズ別・成長ステージ別で異なる必要な栄養についてはここまでお話してきましたが、そのほかにも子犬期の大切な成長特性があります。
子犬の時期は消化能力が未熟のため栄養を吸収する力が弱くお腹の不調が頻繁に起きてしまいます。身体の成長に伴って腸の成熟、消化酵素と消化能力の発達、腸内フローラも成長します。
元気な腸を育てつつ、お腹を健康に保つフード選びがとっても大事な時期なんですね。
消化器だけではなく愛犬の賢さや感受性を支える脳が、急激に発達する時期でもあります。子犬の脳は生後たった数ヶ月で成犬の90%の大きさに達します。そのため脳の急成長を支えるタンパク質とDHAへの配慮もしないといけません。また、この時期の社会化・学習・しつけなどの刺激が愛犬の一生に関わる性格を形成していくためあなたの責任は重大です。
脳や消化器の発達だけではなく、もう一つ子犬期に重要なことが身体を守る免疫についてです。免疫のはざまって聞いたことはありますか?
生まれたばかりの子犬は、そもそも病気に対しての抗体をほとんど持っていません。そのため生まれた直後、母親の初乳を飲むことで母親からの移行抗体を受け取るのです。
しかし、初乳から受け取った母犬からの移行抗体は少しずつ減少をして行き、生後4週頃には病気を防ぐラインを下回ってしまいます。そこから子犬自身が自然免疫を獲得する生後12週ごろまでの免疫システムが低下している時期は「免疫のはざま」といい、体調を崩しやすく病気にかかりやすい時期なのです。
また、免疫細胞の約70%が腸管に存在すると言われていて、実は腸と免疫には密接なかかわりがあります。健康な腸内環境を維持することが、免疫力の維持に非常に有効なのです。そのため免疫が不安定な子犬の時期ほど腸内フローラを整えてあげないといけません。
免疫のはざまの頃にお家に来ることが多い子犬は環境の変化のストレスもあって、特に体調を崩しやすく気が抜けない時期なんですよ。